人間関係に疲れたら試して 自分を大切にすることで周りも幸せになる「思いやりの脳科学」入門
「人に優しくなりたいなら、まず自分に優しくしなさい」。一度は聞いたことがある言葉かもしれません。実はこれ、単なる精神論ではなく、脳科学的にも裏付けのある事実だとしたら、驚きませんか?
人間関係のストレスで心がすり減ってしまうのは、あなたのせいではありません。それは、自分を思いやることで分泌される「幸せホルモン」が不足しているサイン。
もう無理はしない。心を満たすことから始める、新しい人間関係の築き方、一緒に探ってみませんか?

最近なんだか人に優しくなれない それは自分を大切にできていないサインかもしれません
ふとした瞬間に、自分の心が、からからに乾いたスポンジみたいになっているな、と感じることはないでしょうか。
仕事で誰かのぶんまで気を配ったり、家に帰ってぐったりしている体にむち打ってご飯をつくったり。毎日が、そんなことの繰り返し。
がんばっているのに、一番身近な人に、さくれだった言葉を向けてしまう。あたたかい紅茶を淹れてくれたのに、その湯気の向こうにいる人の顔を、まっすぐ見られない。
そして夜、ひとりになってから、どうしてあんな言い方しかできなかったんだろうって、冷たくなった胸のあたりを抱きしめる。
心が潤いをなくした状態
自分を後回しにしすぎると、心は潤いをなくし、大切な人に優しくする余裕もなくなってしまいます。
もし、あなたの心にそんな場面が浮かんだなら。それは、あなたが冷たい人だからでは、決してないのです。
ただ、あなたの心が、もうこれ以上は無理だよ、と正直なサインを出しているだけ。知らず知らずのうちに、自分のことを後回しにしすぎて、心が潤いをなくしてしまっただけなのです。
この記事では、すこしだけ特別な視点から、私たちの心と体の、正直な仕組みについて、一緒に見ていけたらいいな、と思います。
自分を大切にするって、わがままなことじゃない。それは、乾いてしまったあなたの心に、きれいな水をそそいであげること。
そして、あなたと、あなたの周りの世界を、もう一度やさしい光で満たすための、確かな一歩なのです。
なぜ私たちは自分を後回しにしてしまうのか
多くの場合、その根底には「ちゃんとしきゃ」「もっと頑張らないと」という、無意識の思い込みが隠れています。
子どもの頃から、テストで良い点を取ったら褒められ、何かを達成することで認められてきた経験が、私たちの心に深く根付いているのです。
自己肯定感 vs セルフコンパッション
自己肯定感
成功や他者からの評価に左右されやすく、不安定になりがち。
セルフコンパッション
成功や失敗に関わらず、ありのままの自分を受け入れる安定した心の土台。
自分に厳しく当たっている時、私たちの脳はライオンに襲われている時と同じような、強いストレスを感じています。
脳が脅威を感知すると、コルチゾールというストレスホルモンが分泌され、心は常に気を張った戦闘モードに入ります。この状態が続くと、心はどんどん疲弊し、視野が狭くなってしまうのです。
ここで知っておきたいのが、「自己肯定感」とは少し違う、「自分への思いやり」、すなわち「セルフコンパッション」という考え方です。
これは、自分の成功や失敗に関係なく、ありのままの自分に優しく接すること。
たとえ失敗しても「そんな時もあるよね」と、親友にかけるような温かい言葉を自分自身にかけてあげる感覚です。
自分に厳しくすることが、心を戦闘モードにさせるのとは対照的に、自分に優しくすることは、脳を安心させ、心に余裕を生み出します。
この心の余裕こそが、周りの人へ自然な優しさを向けるための土台となるのです。
科学が証明した自分を大切にする本当の意味
では、自分に優しくすると、私たちの脳の中では具体的に何が起こっているのでしょうか。その鍵を握るのが、先ほど触れたセルフコンパッションという考え方です。
セルフコンパッションが「幸せホルモン」を生み出す仕組み
自分への優しさ
共通の人間性
マインドフルネス
オキシトシン(幸せホルモン)分泌
ストレスが減り、脳に安心感が生まれる
自分を大切にするとは、単に自分を甘やかすことではありません。それは、科学的な根拠に基づいた、心を健やかに保つためのセルフケアなのです。
この脳の安全基地がしっかりと機能することで初めて、私たちは心からの余裕をもって他者と向き合うことができるようになります。
満たされた杯からしか愛は注げない 自分への優しさが周りへ広がる理由
「満たされていない杯から、誰かに注ぐことはできない」。この言葉は、自分と他者との関係性を見事に表しています。
自分の心が乾いてカサカサの状態では、誰かに潤いを与えることなどできるはずがありません。
思いやりの好循環
自分を大切にすることで生まれた心の余裕が、自然と周りへの優しさへとつながっていきます。
日本のことわざに「情けは人の為ならず」とありますが、これも科学的に説明がつきます。誰かに親切にすると、された側だけでなく、した側の脳にもオキシトシンが分泌されることが研究でわかっています。
自分を大切にすることから生まれた心の余裕が、周りへの優しさとなり、その優しさが巡り巡って、さらに自分の心を満たしてくれる。
こうして、幸せの好循環が生まれていくのです。
今日からできる心を軽くする3つのセルフケア習慣
ここまで読んで、自分を大切にすることの重要性は分かったけれど、具体的に何をすればいいの?と感じたかもしれません。
大丈夫です。何も特別なことをする必要はありません。ここでは、日常生活の中に少し取り入れるだけで、心をふっと軽くする簡単な習慣を三つご紹介します。
1. 自分のための5分間のマインドフルネス時間
温かい飲み物をゆっくり味わうなど、意識的に立ち止まる時間を作りましょう。過去や未来から心を切り離し、「今」の自分を優しく見つめます。
2. 自分を責める言葉を親友モードに切り替える魔法
失敗した時、「なんてダメなんだろう」ではなく「大丈夫、そんな日もあるよ」と親友にかけるような言葉を自分自身にかけてあげましょう。
3. 自分の小さな頑張りを見つけて褒める習慣
どんな些細なことでも構いません。一日を振り返り、「今日の私、よくやったな」と心の中で自分を褒める習慣が、自分への信頼を育てます。
自分を大切にすることはあなたと世界を幸せにする最強のスキル
ここまで、自分を大切にすることが、いかに科学的で、そして私たちの人間関係や人生に良い影響を与えてくれるかをお話ししてきました。
自分を大切にすることは、決してわがままなことでも、現実から目を背けることでもありません。
それは、変化の激しい毎日をしなやかに生き抜き、大切な人たちと温かい関係を築くための、最も現実的でパワフルなスキルなのです。
もしあなたが今、人間関係に疲れ、心に余裕をなくしているのなら、それはあなたがこれまで周りの人を大切にするために、一生懸命頑張ってきた証拠です。
だから、今日くらいは、そんな自分を褒めてあげませんか。
この記事を読み終えたら、まずは今日の自分に「一日おつかれさま」と、心の中で優しく声をかけることから始めてみてください。
あなたの杯が満たされ、その優しさが自然と周りにあふれ出していく。そんな幸せな毎日が、ここから始まることを願っています。
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