あの頃と変わらない夕暮れの光が、ふたりを静かに包んでいた。出会い直す予感は、言葉よりも先に、風の中に溶け込んでいた。
変わりゆく時代の中で、手を伸ばす勇気はきっと誰かを温める。これは、小さな応援が未来を照らす・・心(こころ)と理(おさむ)、ふたりの再会と約束の物語。

スマホの着信音は、ありふれた午後に、ひとしずくの驚きを落とした。洗濯物を畳んでいた心(こころ)の手が止まる。
「……理くん?」
その名前に宿るもの・・懐かしさ、照れくささ、そして、ふいにこみあげる期待。

画面に浮かぶ文字は、彼女の胸の奥をそっとノックする。
平凡な日常に、かすかな揺らぎ。名前だけで呼び起こされる、あたたかい過去への扉。

今の彼は、都会のガラス張りのオフィスで働いている。モニターに走るコード、ヘッドセット越しに交わされる会話。それでも、理の声は変わらない。
「AIが苦手な人でも、使いやすくしたいんだ。」
誰かに寄り添うこと。技術の、その先にいる人を想うこと。彼はあの日の「優しさ」を、今度は世界へと向けていた。
幼い頃も、今も。彼のやさしい気持ちは、変わらないようだった。

思い出すのは、小さな運動場。小さな背中に向かって、声を枯らして応援していたあの日々。
「こころって、いつも僕のこと応援してくれてたなぁ。」
理(おさむ)の胸の中に、柔らかな記憶が広がる。白い風車が回る空の下、必死な声と小さな笑顔が、確かに彼を支えていた。
幼い日の声援。それはただの励ましではなく、心(こころ)そのものだった。

カフェのテーブルの向こう側。理が開いたノートPCの画面に映る、滑らかな対話型AI。
「すごい! 本当に人みたいにサポートしてくれるんだ!」
心は目を輝かせる。興味よりも、希望に近い感情が胸に広がっていく。変わりゆく時代に、確かに手を伸ばせる気がした。
ただの驚きではない。未来への小さな憧れと、自分も変われるかもしれないという期待。

カフェの帰り道、夕暮れの光の中で、心は立ち止まる。
「私、AIやWEBを味方にしたいの。どうか、手伝ってくれない?」
言葉にするのは、勇気が必要だった。でも、そばにいる彼なら、きっとわかってくれると信じることができた。
弱さではない。未来へ進むために、手を伸ばす強さ。

理は一瞬驚いたように目を見開き、すぐにふわりと笑った。
「今度は僕が、君の応援団になるよ!」
あの日、心が彼に送った声援。今度は彼が、心に向かってそっと送り返してくれる。
手と手が交わるわけでもない。ただ、言葉とまなざしだけで、ふたりは確かにつながった。
理は思った。支えられた記憶が、自分を動かす原動力になる。今、その恩返しをしたいと、自然に思えた。
夕焼けの中、ふたりの影は、長く、優しく伸びていく。
変わるものと、変わらないもの。
その両方を胸に、心と理は、これからの物語を紡ぎはじめる。未来へ続く、やわらかな一歩を踏み出して。
どんな時代でも、変わらない想いがある。小さな一歩を信じて、未来へ進んでいこう。
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